LSD取付

おはぎ自動車でございます。

10月7日のおはぎ自動車走行会に向けてデモカー86にLSDを組み付けしました。

用意する工具

・プレート型トルクレンチ
・ダイヤルゲージ
・マイクロメーター
・光明丹
・プレス
・ベアリングセパレーター
・ヒートガン
・プラスチックハンマー
・スクレイパー

最低限こんなとこでしょうか?

 


 

ここでデフって何?という方の為に純正デフの説明を。

 

下の図は86がハンドル全切りでぐるぐる回っている図と想定してください。

スリップアングルがどうだとかタイヤのたわみはどうだとかいう話は無視です。

 

デフは差動装置といってタイヤの左右差をうまく分配して曲がりやすくする部品です。

LSDは差動「制限」装置といってデフの曲がりやすさを半分制限して加速性能を高める部品です。

また、軽トラなんかにはデフロックといってデフが左右差をまったく吸収しない方式の物もあります。

どれもデフですが、駆動輪にしかついていません。


エンジン→ミッションと駆動が伝わってプロペラシャフトを回転させ、デフ内のピニオン&リングギアを回転させます。
駆動系に於いて最終減速をするこのピニオンギア&リングギア機構をファイナルギアと呼びます。大体ピニオンギアが4回転に対しリングギアが一回転するぐらいに減速し、ディファレンシャルがそれを左右のドライブシャフトへ駆動を分配してタイヤを回転させます。


また、旋回時に外輪と内輪の回転差を吸収してスムーズに車が曲がる事ができるのもデフのおかげです。


今回取り付けるLSDは曲がる事よりも、前へ前へと車を進ませる部品です。外輪と内輪の回転差を吸収する事を一定の間隔で無視するというような常人には理解し難いワケの分からない部品です。

車の性格もガラっと変わってしまうのもLSDの特徴です。音はガコガコ、動きはギクシャク、一般の方ならすぐに修理工場直行のような乗り味になります。

 


 

 

 

これがデフ(ディファレンシャル)

この中身を純正から社外品に交換します。

 

 

ドライブシャフトを抜く為足回りを外しています。

プロペラシャフトとデフの接合部にはタッチペンで印をつけましょう。

そんでプロペラシャフトがぶら下がっているのはあまり良くないのでマフラーに括りつけておきましょう。

後でシャフトを挿すことを考えて横着せずにバラしておいた方が楽です。

 

ようやく外れたドライブシャフト。

マークⅡのツアラーなどはサイドフランジを外すだけでいいのに86はドラシャを引っこ抜かないとイカンのです。

余談ですが、アルテッツァのデフとはスプラインから合わないので適合しません。ファイナルも交換してあったので使えれば良かったのですが。。

 

ドラシャが抜けたらデフを車から切り離します。

 

 

デフの蓋をパカーンと開けたところです。

いよいよLSDの組付けに取り掛かります!

用意したのはKAAZ(カーツ)製2WAYLSDです。

 

とは言っても、いきなりバラさずに純正組み付け状態の確認からです。

ダイヤルゲージでバックラッシュを測定。

86の基準値は0.13~0.18mmです。コンパニオンフランジを固定し、リングギアだけをガタガタ回転方向へ振ってピニオンとの隙間を確認します。

4か所で測定したところ、0.13・0.16・0.17・0.17mmとなっています。結構ギリギリやないか!ですが一応規定値内です。

 

 

バックラッシュの測定ができたら次は歯当たりです。

光明丹(こうみょうたん)を使います。

 

塗ったらぐるっと一周回転させて歯当たりを見ます。

画像失念しましたが、純正でもトー当たりのフェース当たり。こんなものみたいです。

 

測定が終わったのでデフ本体を外し、リングギアをLSD本体に移植します。ヒートガンで温めて熱で膨張したスキにLSDへ嵌めてしまいます。

 

続いてサイドベアリングを組み込みます。

プレスで圧入します。反対側も同様に。

ベアリングが付いたらとりあえずそのまま組んでみて再びバックラッシュと歯当たりの測定に入ります。


LSDとサイドベアリングアウタレース、調整用ワッシャ、ベアリングキャップ(締め付けトルク85N・m)の順に組み付けていきます。

すごーく余談なのですが、クスコ製LSDはサイドベアリングが「付属」している状態で届くそうです。サイドベアリングは片側3570円(税抜き定価)もします。2個要ります。

トータルだとクスコの方が安いやないかー!ちなみに傷付けずに取り外すのは諦めたのでベアリングは買いました。純正品番90366-50001(ベアリングRTT.50.83F)

クスコにしとけばよかった。。。

 

 

とそんな話はよそに、歯当たりの確認。

 

まずはこんな感じ。縦方向ではトー(歯の下側)側に力が集中してるのがわかります。

横方向ではフェース(歯の外)側寄りの歯当たり。

真ん中へんに当たるのが理想とされていますが、LSD組み付け時は純正の歯当たりを参考にピニオンギアはバラさないのでトー当たりはもうそれでよし!という事になります。

フェース寄りの歯当たりを調整する為にはサイドベアリングの調整用ワッシャーをいくつか用意してリングギアをピニオンギアに近づけていかねばなりません。

うーん。さすがに一発では無理かー。

ちなみにこの時点のバックラッシュの値は

0.09・0.11・0.13・0.13mmで、基準値外で少しバックラッシュが狭くなりました。つまり純正デフよりLSDの方が寸法が少し大きいという事が言えますが、0.04mm単位で精度を出してくるKAAZさんに脱帽。

 

というわけでもう一度デフをバラして、調整用ワッシャーを取り出します。

基準にする為にマイクロメーターで厚みを測定します。

リングギア歯側が2.86mm 背側が2.99mm

この左右の厚みを変えて歯当たり、バックラッシュの調整をします。

ワッシャーは純正部品として0.06mm刻みで仕入れる事ができます。

しかし荒い・・・。寸法精度はマチマチです。

2.99mmの次の段階が3.01mmて・・・。0.02mmしか違わないモノが届きました。

STDと書いてあるのは純正のデフに入っていたという意味です。STANDARD(純正)の略称としてよく使われる言葉です。

組み合わせを替えてはバックラッシュそして歯当たりの確認。ダメならまたバラす。入れ替える、組み付ける、測る、バラす・・・

 


試行錯誤の末、一番マトモだった歯当たりがコレ・・・。

やはりピニオンの突き出し量を変えない事にはトー当たりは免れられないようです。

というわけで結局触らなくてよいピニオン側もバラしてしまう事にしました。LSD本体は高い買い物ですから壊れたら怖いですもんね・・・。





というわけでピニオンギアの調整用ワッシャーです。

トー当たりの場合はもともと入っているワッシャーよりも薄い物を選ぶのがセオリーです。

純正2.05mmに対して1.98mmをチョイスしました。

下向いてますが、画像左側にあるのがピニオンギアシャフトです。ベアリングが二つ、ディスタンスピース(再使用不可)、オイルスリンガ、オイルシール、コンパニオンフランジ、セルフロックナット等デフの部品の中では小さいのにたくさんの部品がくっついてます。

ワッシャーを交換する場合はこれらを全て外します。ベアリングは圧入されているのでプレスで外します。

先ほどLSDに移植したリングギアとかみ合うのは一番下の風車みたいなのです。

 

 

ピニオンシャフトを組み付け、(サイドベアリングのワッシャも追加で仕入れて)再びバックラッシュ・歯当たりの測定をひたすら繰り返します。

最終的にこんな感じの歯当たりで良しとしました。歯の当たる面が少しトーから離れているのが確認できます。面圧も僅かに分散されたようです。

フェース当たりの方はバックラッシュとの兼ね合いでここらへんで妥協です。

最終的なバックラッシュは0.13~0.15mmまで詰めました。

 

肝心のサイドベアリングに使ったワッシャーの厚みは失念w無我夢中でしたので・・

長い闘いに決着がついたので新品のオイルシール、ディスタンスピースを取付け、ピニオンベアリングのプレロードを測定しながらデフを組み付け、無事に作業完了しました。

 

 

86さんお疲れ様でした。

 





 

2017年09月20日