トヨタ 1NZエンジンのラクティスの故障診断の整備手帳です。
発進時のモタつきで入庫しました。
走行距離は7万キロ弱。入庫時チェックランプは点灯していませんでしたが、少し前に点灯した事があるとの事。
最近はチェックランプ点灯履歴があるだけでかなりスムーズに故障診断が進みますね。
診断機でフリーズフレーム(故障した際にエンジンコンピュータに保存してくれているデータ)を確認してみます。
故障コードP171(リーン異常)と出ております。
考えられる原因はエアフローセンサー、O2センサー、ISC(電子スロットル)、コイル・スパークプラグ、インジェクタの詰まり、二次エアーの混入などですが、現在チェックランプが点灯していないのでO2センサーは診断機でフィードバックとセンサー電圧を確認したうえで除外。
電子スロットルのISC制御、アクセルペダルの電圧等も正常値。
というような具合で大体センサー系統、次点で二次エアーがクサいと踏んでいたのですが、私の故障診断はズボラ方式ですので簡単なところから攻めていきます。
まずは、エアフローセンサー。ちょっとゴミがついていた程度でしたが清掃して再度電圧チェック。ギリギリ正常値範囲内だったのが割と正常な値に戻りました。
コイル・スパークプラグも多少の焼けはあるが、パワーバランスチェックも行って正常作動していると判断。インジェクターはよくわからんけど多分大丈夫(笑)
エアフロと同時にスロットルボディも清掃。ISC制御電圧は問題なかったので症状は改善せず、発進時のモタつきを確認。
という事はインジェクターか二次エアーかなー?それとも他に何かあるかな?と思いましたが、二次エアーが混入していそうなホースは無さそうです。
考えられるのは一つ。
EGRバルブの汚れです。
1NZの場合、ベンチレーションホースを外して、ラジエーターキャップのステーを外して横にをズラせば簡単に点検できます。
穴の中を丁寧に掃除して、今度は本体を清掃していきます。
これがEGRバルブ本体です。画像は清掃後ですが、真っ黒でした・・・。
モーターも取り外して摺動部もきちんと綺麗にします。
半年放置の耳の穴の耳垢のようにボロボロと堆積したカーボンが出てきます。
ガスケットを交換して元に戻して無事に発進時のモタつきは解消されました。
インジェクターじゃなくてよかったです。燃料系統の修理は色々と気を使いますので。
本来ならインテークマニホールド内部の清掃もしたかったですが、あまり費用をかけても良くないと判断し、次回同じ症状が出たときにとお客様にお伝えしました。
…で、
なんでEGRバルブが原因か?という理屈です。
EGRバルブとは排気ガスの一部を触媒より前で一度インテークマニホールド内に戻し、再燃焼させる事で排気ガスのクリーン化(NOxの低減)をはかりつつ、インテークマニホールド内の負圧を0に近づける事でピストンのポンピングロスを減らすものです。
なんのこっちゃわかりませんが、吸気に排気ガスが混ざるシステムです。
燃費の改善、排ガスのクリーン化に貢献する素晴らしいシステムですが、EGRバルブが開いている間は排気ガスに含まれる燃えカス(カーボン)がインテークマニホールド内に堆積していきます。通り道であるEGRバルブにも当然カーボンが堆積していき、オープンクローズを繰り返していくうちに堆積したカーボンが間にはさまってバルブのクローズを阻害します。
そして、アイドリング中には完全に閉じているはずのEGRバルブに隙間ができ、排気ガスがインテークマニホールド内に入ってしまう事によってエアフローセンサーで測定した値よりも多い空気が燃焼室に入ってしまう為、O2センサーでリーン(燃料希薄)異常を検出するんじゃーないかというところです。
EGRは今の車に無くてはならない物であると同時に排ガスのカーボンを吸い込むのは宿命なので必ず清掃が必要になってきます。
さらにひどいとインテークマニホールドを取り外して掃除しないとダメな状態にまでなってくることもあります。もっと深刻なのはピストンバルブや燃焼室へのカーボンの堆積です。
化石燃料を燃焼させている以上は必ず付きまとってくる不具合の一つです。
エンジンが暖まりきる前にエンジンを止める「ちょこっと乗り」を繰り返し行う乗り方をされている方などは特にこの症状が出やすいと思います。
EGRを清掃すると同時にエンジンコンディショナーを併用する事でかなり効果はあると思います。
ちなみに今回の工賃はEGRバルブ清掃のみで工賃2700円(税込み)でした。
当店ならEGRバルブの清掃ができますので心配な方や心当たりのある方はお気軽にご相談下さい。
おわり