毎度、おはぎ自動車でございます。
今回はダイハツKFエンジンの弱点ウォーターポンプの異音修理です。
■まずウォーターポンプって何ですの?っていう方の為に
ウォーターポンプはエンジンに連動して回転する冷却水を循環させる為の部品です。
冷却水はエンジンがガソリンを燃焼させた時に発生する熱を奪い、高温になった冷却水はラジエータで冷やされ、冷却水は再びエンジンへ向かい熱を奪ってからラジエータへと、何度も循環しています。
ウォーターポンプはその冷却水を循環させるポンプなワケです。
ウォーターポンプが無い(壊れる)とオーバーヒートします。
冷却水を循環させるウォーターポンプはエンジンにとってエンジンオイルに次ぐ重要な生命線です。
車にとってオイルが血液なら冷却水は汗といったところでしょうか。
汗をかかないと人間は熱中症になるのと同じですね。
ウォーターポンプはエンジンの動力を得る以上、軸が外に飛び出している必要があります。さらに密閉されている冷却水が外に漏れ出るのを防がなければなりません。つまりベアリング構造を有しながらも水が漏れるのはご法度という過酷な宿命を背負う部品です。
ベアリング&シール部の軸に負担が掛かってベアリングにガタが出てくるとブレによる異音、密閉性の低下で冷却水の漏れなどいろいろな不具合が出ます。漏れないまでも異音が発生していれば漏れが起こる前兆という判断がつきます。
走行中にも気になるほどのレベルで異音が発生するので交換はした方が良いです。
最悪のケースだとウォーターポンプのロックが起こります。ロックの場合は即刻オーバーヒートです。タイミングベルトでウォータポンプを駆動しているエンジンはタイミングベルトが千切れて即エンジンブローです。
前置きが長くなりましたがそんな大事な部品であるウォータポンプの異音修理でご入庫いただきましたので作業の様子をアップさせていただきますね。
■ダイハツ ミラカスタムのウォーターポンプ異音修理
ダイハツの、ことにKF型と呼ばれるエンジンはウォータポンプの不具合との戦いの歴史が色濃いエンジンです。
何度も不具合が出てその度に部品の品番が変わり、対策品を用意するも再び不具合が起きの繰り返しです。ダイハツも苦汁を舐めさせられた事でしょう(一番苦汁を舐めているのはメカニックですが)。
エンジンから異音がすると言われて電話口で整備士が「あぁ、ウォータポンプだろうな。」と思ってしまうほど頻発している不具合です。
音も様々でアイドリング中にキーンと耳鳴りのような音を出す物もあれば、ガラガラとエンジン内部がイカれちまった!と思う程の異音を出すなどバリエーションに富んだ不具合の出る部品です。
今回ご入庫の車両はミラカスタム。異音は後者のガラガラタイプです。
入庫直後の音をまずは動画でどうぞ。
ガラガラと言っています。
軽のエンジンなんてこんなものじゃない?と動画では思うかもしれませんね。
順番に故障探傷していく為に一本ずつ補機ベルトを外していきます。
クーラーベルトを取り外してエアコンのコンプレッサーをフリーにした状態でエンジンをかけてテストしてみます。
クランクプーリーへのベルトのテンションのバランスが崩れた事で異音にも若干の変化がありますが、エアコンの不具合では無い事が確認できました。
では本命のウォーターポンプとオルタネータを駆動しているファンベルトを外した状態でエンジンを始動してテストします。
エンジンをローアングルから攻めた画像です。ファンベルトはオルタネータについているアジャスティングボルトを緩める事で取り外す事ができます。14ミリの硬くしまったボルト(ダイハツのはこれも昔は強度不足だった)を緩めてアジャスティングボルトを緩めればオルタネータがウォーターポンププーリーの方へ近づいて行き、結果ベルトが緩む仕組みです。
ウォーターポンプ本体はプーリーに覆われているので見えません。これも目視で漏れなどを発見するのに邪魔になっており、ただでさえ不具合の出やすいウォーターポンプの故障を助長させています。はっきり言って作りが悪いです。
続いてウォーターポンププーリーの取り外しに掛かります。ボルト4本です。ボルトに工具を引っ掛けて緩めようにもポンプ自体がクルクルと回ってしまうので初めてやる人を絶望に追いやる部分ですね。
ベルトを張った状態でならメガネレンチ一本で画像の4つのボルトを緩める事ができます。ファンベルトも交換する前提の作業ならそれも良いでしょう。楽ですが、今回は特に悪くもないベルトをわざわざ傷めてお客様にお返しするワケにはいきませんので別の方法で緩めます。
ベルトを外してしまった後なら長めのマイナスドライバーやSST(特殊工具)とメガネレンチを併用するなどしてボルトを緩めます。テコの原理でポンプを回らないようにしつつボルトを緩めて行きます。
プーリーが外れました。
ウォーターポンプとようやくご対面です。
ウォーターポンプです。
エンジンとの連結部分のボルトを外してしまえば取り外しできます。冷却水が勢いよく漏れてきますので十分にエンジンが冷えてから作業しないと圧力のかかった熱水が吹き出したりしてくそ熱いです。
どうしても熱いままやる場合は決死の覚悟でラジエータキャップを開けてラジエータのドレンコックも緩めておきましょう(そんな人居ないと思うけど)
冷却水は甘い匂いがしますが、飲むなとして体内に入り代謝されると立派な毒に変化しますのでDIYでやられる方は処理の際に喉が渇いたからと飲み干したり、下水に流したりしないようにお願いします。処理に困った場合は当店に持ち込んでください。
適切に処理して環境に貢献するのも修理工場の努めです。
そんなこんなでウォーターポンプの交換まで来ました。
用意したのはアイシン製ウォーターポンプです。もちろん対策品です。プーリーも対策品です。対策前のプーリーはファンベルトがちょっとだけ捻じれてしまっているようです。
年式によってはどちらも対策品になっていたり、片方だけ対策品になっていたりするので無駄な出費を省く為にも適合の確認は必須です。プーリーなんてそもそもよっぽど交換する必要は無い部品ですしね。
大きく違うのはインペラが樹脂になっている事でしょうか?金属の羽根を使っているよりコストが落とせるからか?(対策品の作製や対応などでお金使いすぎてケチった?)
正面の方もベアリングからプーリー受けの部分までの距離を短くして、受け自体も薄くなっています。軸に掛かる負担を軽減しているのかと思います。
ボディ自体の形状もリブを潔く取っ払って丸っこい愛されボディになっていますね。
古いウォーターポンプを確認してみるとやはりシール部が傷んでいます。ホコリやゴミが付着しているという事は水分があってゴミを吸着した証拠ですかね。手で回すとギギギという抵抗を感じます。キュイキュイと音も確認できました。
ついでにオルタネータのベアリングも確認してみましたが、ウォーターポンプほどでは無いにしろちょっとだけ違和感があるような・・・(後に判明します。)
何にせよ、ウォーターポンプが外れた状態で異音の確認をします(先走って部品は事前に注文しておいた。)
動画では既にウォーターポンプ自体を取り去っている状態です。随分と静かになりました。
これが本来のエンジン音です。ウォーターポンプが壊れていたのは明白だったので当たり前と言えば当たり前なのですが・・・。
というわけであとは元通りに戻すだけです。
新品のウォーターポンプに新品のOリング(付属してくる)を付けて、新品のプーリーでピカピカのウォーターポンプ(ボルトも付属)となって復活です。
ベルトを組んで、抜けた分のクーラントを補充して作業終了です。
ベルトを組んだ状態でエンジンを始動しましたが、なんか別の異音が!
ウォーターポンプの異音がうるさ過ぎて聞こえなかったのですが、オルタもやっぱし音出してました。
すぐにどうこうなるものでも無さそうですしお客様のご予算の都合もありましたので一旦お返しして、後日改めて作業させていただく運びになりました。
今回の合計金額:18000円
ウォーターポンプ(工賃8100円 部品9000円)
クーラント(2L×648円)
端数調整(396円)
次回のオルタ交換は工賃取らず(自分の失態であるので)、部品代だけいただくよう提案させていただきました。
おしまい